転職の合間にある休日を活用しての、フランスを中心とした一人旅をしました。テーマは自分のことくらいは自分で決める!」。ツアーではない、全6日間の未知の旅・・・どうなるのでしょうか。5日目はマルセイユからアルル、パリへと移動しました。
◆2010年1月17日(日)
フランスでのクルマは日本と逆の右側通行です。
一般道路で信号はほとんどなく、代わりに「ロータリー」が数多く存在します。交差点にあたる箇所で、クルマは一度ロータリーに入り、左回りで行きたい道路へ出ます。広大な土地を使うことで信号機を減らすという、理にかなった方法といえます。
パリの凱旋門はある意味、このロータリーの大ボスなのかもしれません。凱旋門には信号機がありますが。
ロータリーに差しかかると、まずはロータリーを回っている左方向からのクルマが途切れる瞬間を待ちます。グズグズしていると後ろからクラクションを鳴らされるわけですが、幸いなことに私はロータリーへ入る直前にエンストをして鳴らされた一度を除いて、スムーズな運転ができました。慣れるまでは、ロータリーに入るときよりも、自分の右後ろにいるかもしれないクルマの存在の確認を瞬時にすることになる、出るときの方が緊張します。
宿泊先へ向かう夜、地図を見ながら「ロータリーがある近くだな」という認識をしていたため、山ほどあるロータリーに出くわした私は混乱したわけです。流暢な日本語を話すカーナビは、ロータリーが近づくと、例えば「次のロータリーに入って、3番目を、右です」などと言っていました。
高速道路の制限速度の多くは130km/h。たまに90km/hになるときがあり、その度に親切なカーナビが教えてくれます。高速道路から出るとすぐに50km/hになり、130km/hから50km/hへきちんと落とさないことで捕まるケースが多いとものの本に書いてありました。
一定の距離ごとに日本におけるサービスエリアのような箇所があるため、安心して走行することができます。
今日はマルセイユ(Marseille)から、まずはアルル(Arles)へと向かいます。モンペリエよりもほど近い歴史のある町です。
料金所を通るたびに頭をよぎるのは、昨日の夜、最後の料金所で支払いのために停まり、再び出ようとした際にエンジンがかからず焦ったことです。今日も祈るように料金所を通り問題はないものの、クルマの調子が克明に悪くなっていることに気がつかないふりをし続けるわけにはいきませんでした。
クルマの不調の原因はなんとなくわかっています。ディーゼル車に、ハイオクのガソリンを入れてしまった「誤給油」です。それも、満タンに。
クルマを借りて最初にエンジンをかけたとき、かすかに「あれ? 懐かしい感覚だな」と考えていました。それは昔、実家で乗っていたいすゞのディーゼル車に似ていたからです。この「あれ?」というものすごく微々たる感覚ほど重要なものはないはずだとは知っていたのに、などと今さら考えていても仕方がありません。
高速道路をおりて数km走行。10時頃、小さな町で信号待ちをしていてふとバックミラーをのぞくと、白い排気ガスで後方のクルマが見えないではないですか。クルマを隅に寄せてあわてて停車してエンジンを止め、再びキーをまわしてみましたが、クルマはまったく反応しませんでした。
「あーーー、終わった・・・」これが、ハンドルを抱えながら口にした言葉です。終わった、などと言っているわけにもいかず、とりあえずクルマからおりて見渡すと、なんと! 50メートルほど後方にガソリンスタンドがあるではないですか! それも、運のよいことにフランスでは休みが当然の日曜日にも関わらず開店しています。走って店に入り、「ヘルプミー!」で切り出して身振り手振りで説明すると、店の主人は反対側の店に行けと言っているようです。反対側の店はなんと! さらに運のよいことに小さな自動車修理工場でした。
「修理工場は休日のようだが」と伝えると、大丈夫だから、的な答え。再び走って修理工場の扉を開けてみると、マリオ似のおじさんが出てきました。話をすると最初は怪訝そうだったものの、懸命な眼力でなんとか事情はわかってもらえたご様子。50メートルほど先のクルマまで案内すると今度は、ここでは無理だ、ちょっと待ってろ、的な答え。気がつくとクルマは修理工場まで運ばれていました。
無事に修理工場の前におろされただけで安心してしまったのは、仕方がないと言えるでしょう。
再度、事情を説明。おじさんがクルマの給油口のキャップをまわすと「プシューーーッ」という音とともにガスが抜け、よくある肩をすくめるジェスチャー
┐(‘~`)┌
をするのを見届けてから、私はマンガのようにしゃがみ込んで頭を抱えて「あーーーっ」とわかりやすく落胆するのでした。落胆している私に目をとめることもなく、おじさんはなんとか修理をしようとしてくれるのですが、いかんせん、若者によってパンクしたバイクが持ち込まれたり、通りかかる何人もの年配のご友人と抱き合ったりと、一人でものすごく忙しそうな感じです。
ふと気がつくとルイージ似の、おじさんのご友人ぽい方が修理をしていました。タバコを吸う度に吸い殻を水たまりへ投げ込みながら、幾度も挫折しそうになりつつ、なんとか修理が完了。「うわーーーっ、直ったっすか! すごい!」と日本語で言う私に、おじさん方々は「ブルン、ブルーン!」とエンジンの擬音で答えるのでした。
残るは誰が考えても、おカネの問題です。フランス語を話せないとわかったおじさんは、どこから英語を話す観光客風の女性を連れてきて通訳として私とのコンタクトを試みますが、私が英語すら話せないとわかると、二人でよくある肩をすくめるジェスチャー
┐(‘~`)┌ ┐(‘~`)┌
のお出ましです。
私を助手席に乗せての時速130km/hのテスト運転の後、呼び寄せたのはおそらくはおじさんの息子。おじさんと、ちょっぴりインテリな英語を話す息子が、再びおカネの話をします。いいです、わかっています、交渉の余地などないし、そんな気持ちもありません。と、いうことで、いつもの笑顔でのクレジットカード払い。移動と修理と我らがディーゼル燃料満タンの代金、しめて256.52ユーロ、日本円にして34,127円也。
(>_<。)
カードでの支払いを済ませて、修理工場を後にします。数百メートル移動、クルマが問題なく走ることを確認してから、隅に寄せて大きなため息をついた後、でもまあ誰かを傷つけたわけではないからよかったよな、ということで「よし!」というかけ声とともに気を取り直します。時刻は12時30分。おカネはもとより、2時間30分という時間のロスが悔やまれてなりません。
とにかく先へ進みます。ごく普通の一般道路でも制限速度が80km/hであることは驚きです。
小さな町を抜け、
どこまでも続く広大な土地を眺め、
名も知らぬ駅前のロータリーを得意げに回って、
ようやくたどり着きました。ゴッホの絵でも有名なフランスでも最大の面積を持つ市、アルル。
クルマを駐車場(だと思われる場所)に停めて一歩、足を踏み入れると、そこには歴史を感じずにはいられない、美しく古い町並が広がっています。
たむろっている若者らの特異な視線を受け流し、例によって小走りで坂を上がります。
歩くこと約5分、見晴らしのよさそうな広場があります。
町を見下ろしてみます。案内板に何が書いてあるのかはわかりませんでしたが。
ガイドブックが正しければ、ここにあるのは世界遺産のひとつ、円形闘技場(Les Arènes)ということになります。私が悲しいのは、工事中の円形闘技場を目の当たりにして開口一番「あ、大橋ジャンクション」と言ってしまったことです。
何やら徹底的に工事をしているご様子。
それでも正面に回ってみると、中を見学できるようです。
見学料を支払ってチケットを受け取りつつ、何やらこのチケットでもう一カ所が無料になる、的なことを言われてとりあえず笑顔でうなづきます。
順路のようなものが書かれていたような気もしますが、まずは行きたい方向へと体を向けます。階段を上ると、そこでは太古の歓声を聞くことができました。
紀元1世紀に建設された、収容人数は約2万人の、ローマ時代の闘技場です。アルルに現存する古代ローマ遺跡で最大のものとのこと。
2千年も前の建物ということを忘れてしまうほど、保存状態がよいです。現在でも闘牛などのイベントで使われています。
せっかくなので、一番高く行くことができそうな、競技場の外側にあるてっぺんを目指してみます。
先ほどよりも高いところということもあり、アルルの町をよく見渡すことができます。遠くにはローヌ川が流れています。真下は、入ってきた正面の入口になります。
まさか、町と競技場とを隔てる壁の上から眺めることができるとは考えてもいませんでした。
てっぺんから競技場を見渡します。
願わくば、競技場が完成した日に行って、式典の写真撮影をしてみたいものです。
下へと移動して、通路を抜けてみます。
今度は何やら闘わなくてはならないような気になってきました。
せっかくなので、トイレも撮っておきます。
ゆっくりと観ていたかったものの、そう言ってもいられず、次へ進みます。
3分ほど歩くと入口があり、先ほど購入したチケットを提示して中へと入ります。
世界遺産のひとつ、古代劇場(Théâtre Antique)です。
紀元1世紀に建設された、ローマ時代の古代劇場です。劇場の中央に立つと、そこでは太古の歓声を聞くことができました。
舞台には新しい設備の一部を見ることができ、今でもコンサートやオペラで利用されていることがわかります。
誰もいない古代劇場の観客席に座って、ひとり静かに考え事をしてみようと考えるつもりでしたが、何を考えようか考えているうちに時間が過ぎていったのでやめました。
劇場の外側にはたくさんの石が散在し、歴史の積み重ねを感じます。
アルルの町を小走りで進みます。
レピュ・ブリック広場に出ました。
広場に面している建物はサン・トロフィーム教会(L’église St-Trophine)。
11世紀から12世紀にかけて建造された教会です。
基本的に、自由に見学をすることができるようです。
荘厳な雰囲気の中にあって、自然に気持ちが落ち着いてきます。
彫刻とステンドグラスの調和と美しさには言葉を失わせる力があります。
歴史的な背景や学術的な知識はないものの、ただいるだけで心が洗われていくことがわかります。
教会を出て、再びアルルの町を歩きます。振り返ると右奥に教会、正面に市庁舎を見ることができました。
道のほとんどが石畳になっています。
迷路のような町並を進みます。観光場所以外で、人を見ることはほとんどありませんでした。
ローヌ川の川沿いを歩きます。
もう少し歴史にふれたかったのですが、時間は許してくれませんでした。
様々な場所で、クルマの一方通行を時間で制御する装置を目にすることができます。
道に迷いそうになりつつ、円形競技場まで戻ってきました。
16時、再びクルマで移動します。目指すは、マルセイユ。
懸命に高速道路を進むものの、またもや時間との戦いを呈してきました。
マルセイユの市街に着く頃には、17時を過ぎていました。頭の中のぼんやりとした計画では、午前中のトラブルがなければ、昼過ぎに来ているべき場所です。
来ました、2600年の歴史を持つ港町、マルセイユ! 俗にいう大メインクライマックスではございますが、ここで残念なお知らせがあります。
なんと、ここでの滞在が許される時間は約30分。「こんなにすごいところだとは考えもしなかった、最初に足を運べばよかった!」と、まあ、大好きな食べものを最後まで取っておく性格が仇となってしまった次第です。
路面電車あり、地下鉄あり、高速道路あり。クルマの中から羨望のまなざしで外を見渡します。
クルマのハザードランプをつけたまま、港の周辺を「プレビュー版! プレビュー版かよ!」と、時間のなさを嘆きながらシャッターを切っては走り去っていました。旅のプレビュー版です、これは。そんなものがあるのかどうかはわかりませんが。
決めました。ここは、いつの日にかまた、来ます。
17時30分、約30分の滞在を終え、心の中で涙目になりながらマルセイユをあとにしました。
プロヴァンス空港(Aéroport de Marseille Provence)に到着した頃には、当然のごとぐ完全な夜になっていました。空港の周りをドキドキしながらレンタカーで走ったことを遠い日のように思い返しながら同じ道を走り、クルマを返却。手続きをして20時30分、乗り込んだエールフランス航空の飛行機が離陸します。
移動中の飛行機の中で、軽食が出ました。考えてみれば、このチーズのサンドイッチがこの日の夕食になっていました。
21時50分、パリのオルリー空港(L’Aéroport d’Orly)に到着。宿泊先のGrand Hotel Séniaが空港からほど近いことはわかっていたものの、歩いていけるのかどうかがいまいちわかりません。とりあえずタクシーに乗ろうとすると、運転手は遠くを指差して何かを言っています。
仕方なく空港の中へ戻り、今や「わからなければすぐに聞く」が座右の銘になっている私は、閉まりかけたインフォメーションの女性に住所が書かれた紙を見せつつ「アイ ウォントゥー ゴー ディス ホテル」と言います。女性はすぐにうなずき、どこかへ電話をかけ、私にバス停を指示。
バス停に行ってみると、同じような旅行客が待機。どうやら、いろいろなホテルへの送迎バスが出るバス停だったようです。しばらくすると宿泊先のバスが来て、どこかの駅へ立ち寄って男性の客を乗せ、ホテルに到着。とても歩いていく距離ではなかったようです。明日はどうなることやら。
もう日本に戻ってきているはずなのに、「おおがみさんの明日はどっちだ?!」とリアルタイムで(?)ドキドキしながら楽しませてもらってます。一人旅のトラブルってしんどいけど乗り越えた後なんか一回り成長した気分になりませんか?
失敗すら、わざとなのではないかと疑ってしまうほど、素晴らしい出会いで解決しているところが心地よいですね。でも、読んでいてハラハラします。
でもニホンのレンタカーで同じ事やって返したら10マソ取られたあるよ
いや海外でレッカーされる経験が羨ましかったり(誤)
MANのキャリアカー萌えー
http://tinyurl.com/ygbvydw
>>まめさん
なります、なります。
あ、できるじゃん俺、みたいな。
ただ今回の誤燃油の場合、成長した感覚よりも後悔した気分の方が大きくて、なんだか残念です。
>>ぼんじさん
わざとではないのですが、写真を撮ったりして、明らかに記事を意識している部分はあります。
それさえなければ、もう少し心地のよい勢いのある旅をすることができるのですが。
>>ゴローさん
いやいやいやいや!
おかしいです、あれだけの情報で、なぜ場所が特定できたのかが30分かけてもわかりません!
おかしいです・・・
やはりゴローさんはおかしいです・・・